2013年9月18日水曜日

韓国出張のおまけ その2

スウォンファソン編で2013年春・韓国出張編の最後になります。
かなりボリュームが増えたので3回に分けました。今回は2回目。
(実はさらにボリューム増えたので2回目を分けました。今回は 前編 八達門から長安門まで です。)
デジカメ画像がほとんどです。



4月の半ばからひと月ちょいほど、韓国に出張していました。
休日にホテルの近所にある世界遺産「スウォン ファソン」に行って来ました。



 



●第二回、水原華城。 ファソン巡り(前編 八達門から長安門まで)



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(2013.4.27 八達山入り口付近の桜? byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F3.5 ISO800 1/4000)



スウォンは漢字で書くと「水原」、ファソンは「華城」。
今から二百数十年前、18世紀末の李氏朝鮮王朝の王・正祖によって作られた城郭都市です。
それまでの朝鮮半島の中世的な築城技術の殻を破り、西洋の築城技術を取り入れ融合させた独特な景観があります。
具体的にはそれまでの石積みのみ(日本の中世城郭と同じく)から、一部レンガ積みを取り入れています。
華城、という名前。いいですね。とても好きです。



正祖の時代の朝鮮の都は今のソウルの地にありました。
中世朝鮮には両班(リャンバン)という貴族層が社会の支配層、既得権者となっており彼らは自身の権利を守る為に保守的にならざるを得ず、王でもその壁を突き崩すのは容易ではありませんでした。
ソウルの地にあった当時の都は、そうした既得権益者たちの巣窟になっていました。
正祖はそれまでのどの王よりも革新的な王でしたが両班の既得権の壁は厚く、思うように改革を進めることは難しかったのです。
彼はそれまで朝鮮社会を覆っていた閉塞感を抜け出す為、新しい都を作ることにしました。
その地がスウォン(水原)であり、築いた城がファソン(華城)ということになります。
しかし、残念ながらスウォンは新しい都にはなりませんでした。
あと一歩、というところで正祖は病死してしまうからです。
正祖の革新事業は残念ながらその後の反動で退潮し、両班はじめとする保守派の支配に戻ります。
その後約200年を経て朝鮮戦争が起こり北朝鮮によりソウルが奪われた際に、スウォン市は臨時首都になった時期があります。



さて、ファソン。
前回は八達門(パルダルムン)付近のマーケット情報でした。
ファソンは華城と書き、城ではありますが日本の近世城郭とは程遠く、スケールは異なりますがむしろ中国の城郭都市に近いです。
城壁が取り囲む中に街があり、王の住まう宮殿があります。
八達門の近くにこの城壁沿いを観光するスタート地点があります。
全体図はこんな感じ。



Map1



(ガイドに載っていたMAP)



Map2
(実際の華城 ぐーぐる先生)



Kumamoto_map3
(同じ縮尺の熊本市・熊本城付近 ぐーぐる先生)



外周は5.7kmあるそうです。
ガイド資料によれば2時間で全周を回る、と書いてあります。
後から思えばとんでもないです。
もちろん私はお金もなくヒマだったので、ぜんぶ、まるっと、ぐるっと、巡りました(苦笑
ちなみに、同縮尺の熊本城付近のMAPも並べました。



旧ファソン市街の西側には八達山があります。
高さ的には熊本市の弁天山くらいなので山というほど、そびえたつほどの山ではありませんが、ファソン全体を見下ろせる小高い山です。
ファソンの城壁の西側は峰に沿って走っています。つまり山の東半分はファソンの城内、ということになります。
八達山の東側、街側のふもとには山を背にして(日の出る方向正面を向いて)ファソンヘングン(華城行宮)という宮殿が置かれています。
ファソンの街はきっちりした条里制ではないようですが、宮殿の表に南北に走る大通りがあります。
街を取り囲む城壁の各方向に門があり、大通りの北側に長安門、南側にあるのが前項の八達門、東(正確には東北方向)に蒼竜門。西(正確には西北)華西門。
西側の八達山山頂と東側蒼竜門近くに守備の要(それぞれ西将台、東将台)があります。



中華風の風水術の影響があります。
背山臨水。
韓国ばかりでなく、日本でも中国風水の影響は大きく、昔の中華風を真似た街は風水術を気にしながら作られています。
昔、平安京と呼ばれた京都は最たるものでした。ただこれも中華風、というだけで本場のような版築によるそびえたつ城壁などはなかったようですが。
(現在の京都には臨水にあたる水が今はありません。昔は「巨椋池」というものがあったようです。)



チケット売り場があり、その前に民族衣装を着たおばさんがいました。
日本語はちょっとだけ通じました。



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(2013.4.27 八達門近くの八達山入り口 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F8.0 ISO100 1/250)



チケット売り場の横から城壁が走り始めています。
山に沿って作られている姿は壮観ですが、自分は既に万里の長城を見ているので、中国並なものを想像するとかなりちゃっちいです。
城壁の高さはあまり無い上に城の周りに堀(空堀、水堀)はないんですねえ。
防御力はどの程度あるんだろうか・・・



ここでチケットを買うのですが、よく見るとチケットを買わないで山を登っていく人たちがいます。
(買わなくても良いのか?)
後で聞いたら地元民は無料だそうです。
入場料は1500w(150円)です。安!



城壁に沿って階段を上っていきます。
城壁の高さは内側は2mから3m。外側は3mから4mくらい。切石積み、城壁には銃眼があります。
途中、物見や戦闘時に兵士が籠る小さい建屋や、屋根のない矩形のエリアがあります。「雉」(チ)と言うものです。



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(2013.4.27 南雉 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F8.0 ISO100 1/100)



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(2013.4.27 南雉の銃狭間 向こうに見えるのは八達門 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F8.0 ISO100 1/100)

「雉」に屋根がついたものが「舗楼」(ホロウ)です。
ローカルな守備の拠点になると思われます。
城壁の各方向に数か所づつありますが、大きさはそれほど大きくありません。
これより規模の大きい防衛拠点には砲楼と、空心墩(土偏に敦。)という塔が北側に2箇所づつ4か所あり、手が込んでいるつくりをしています。
北側3門の守備をサポートする役割があり十分考えられた設備だと思いました。
これとは別にさらに4箇所の角楼があります。
登りきると山上は割と平坦です。



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(2013.4.27 八達山登り道 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F13.0 ISO100 1/60)



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(2013.4.27 西南暗門 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F13.0 ISO160 1/60)



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(2013.4.27 西南角楼(華陽楼) byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F13.0 ISO200 1/60)



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(2013.4.27 八達山登り切った平坦部分 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F13.0 ISO100 1/160)



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(2013.4.27 西舗楼 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F13.0 ISO400 1/60)



ここから西将台までが山上になります。
西将台は北方向の見晴らしがいいです。



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(2013.4.27 西将台からの眺め1北東 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F13.0 ISO100 1/100)



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(2013.4.27 西将台からの眺め1南東 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F13.0 ISO100 1/200)



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(2013.4.27 西将台 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F13.0 ISO160 1/60)



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(2013.4.27 西弩台 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F13.0 ISO100 1/100)



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(2013.4.27 西将台付近の花(つつじの一種?) byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F3.5 ISO100 1/400)



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(2013.4.27 西将台からの下り道 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F3.5 ISO100 1/400)
 



ファソンの北はソウルです。
この城にとっての仮想敵はどちらの方向から来ることを想定していたのでしょうか。
防御の厚さを考えると北側の防備が充実しています。
東、西の門はどちらかと言えば北側にあり、町の形も北側に開いた台形です。
敵は北側から来ると考えられていたのでしょうか。



西将台の先は山を降ります。城壁も山を下っています。
下りた先に西北の門、華西門があります。



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(2013.4.27 華西門 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F11.0 ISO100 1/80)



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(2013.4.27 華西門正面 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F11.0 ISO100 1/80)



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(2013.4.27 西北墩(土偏に敦) byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F11.0 ISO100 1/80)



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(2013.4.27 華西門馬出(甕城)から空心を望む byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F11.0 ISO100 1/200)



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(2013.4.27 華西門の龍 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F11.0 ISO640 1/60)



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(2013.4.27 華西門馬出(甕城) byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F4.0 ISO100 1/1000)



門の前側が大きく湾曲した城壁に囲まれており、日本の城郭技術で言えば、「丸馬出」そのものです。
馬出し曲輪自体を一種の楼閣にし、出城のような形にしたのが、大坂冬の陣で有名な真田丸です。
これは武田流(甲斐の武田信玄)の築城技術ではないかっ!と、興奮してしまいました。
華城は18世紀末。武田流築城術は16世紀末。
むむむー、なんてな。
築城術なんていうのは、突き詰めればどこの国でも似たようなものになるのかもしれません。



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(2013.4.27 北舗楼 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F11.0 ISO100 1/80)



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(2013.4.27 華城北辺の道 後ろの山は八達山 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F11.0 ISO100 1/250)



華西門から東進すると、北の玄関、長安門(チャンアンムン)に到着します。
かなり威容がありますね。
現存する韓国国内の城門の中で一番大きい城門だそうです。
これを作った正祖が当時の都(漢陽、ソウル)から来るときに通る門で、いわば正門と言っていいようです。
こちらも、防備は厳重であり、華西門でも見た甕城(丸馬出し)構造あり、入り口は正面になっているのでやや効果は半減だが櫓あり。
ちなみに、この日本で言えば馬出曲輪と呼ぶ構造は、「甕城」と呼んでいるそうで、当時の正祖の側近で実学者の丁若鏞(チョンヤギョン、ギョンは金偏に庸)の設計らしい。



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(2013.4.27 長安門正面付近 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F14.0 ISO100 1/60)



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(2013.4.27 長安門正面付近 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F14.0 ISO200 1/60)



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(2013.4.27 長安門の龍 北門だから?背景は黒 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F8.0 ISO800 1/60)



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(2013.4.27 甕城内からの長安門正面 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F11.0 ISO200 1/60)



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(2013.4.27 長安門甕城内から甕城裏側 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F14.0 ISO160 1/60)



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(2013.4.27 長安門甕城内にある解説 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F14.0 ISO200 1/60)



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(2013.4.27 北東敵台から見た長安門 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F14.0 ISO100 1/60)



門の左右からも門に取り付いた敵へ攻撃が出来るように、「敵台」という防衛拠点があります。
先述した「雉」とほぼ同じ構造です。



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(2013.4.27 北西敵台 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F14.0 ISO160 1/60)



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(2013.4.27 北東敵台 byNEX5N Tamron 18-200 III 18mm F11.0 ISO100 1/100)



華城編が長くなりそうなので、ここで分けました。



写真もやや膨大。
この先は、後編 華虹門から南水門まで に続きます。







2008夏 釜山旅行 初日 
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2008夏 釜山旅行 二日目 その1
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2008夏 釜山旅行 二日目 その2
http://pon-blue.way-nifty.com/sora/2008/08/post_9584.html
2008夏 釜山旅行 三日目
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韓国出張の日常 たぶんその1
http://pon-blue.way-nifty.com/sora/2013/05/post-8a09.html
韓国出張の日常 たぶんその2
http://pon-blue.way-nifty.com/sora/2013/05/post-455b.html
韓国出張の日常 たぶんその3
http://pon-blue.way-nifty.com/sora/2013/06/post-733f.html
韓国出張の日常 たぶんその4
http://pon-blue.way-nifty.com/sora/2013/09/post-f251.html
韓国出張の日常 その5
http://pon-blue.way-nifty.com/sora/2013/09/post-e26b.html



韓国出張のおまけ その1
http://pon-blue.way-nifty.com/sora/2013/09/post-c8c4.html





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