2018年8月4日土曜日

剣客商売全集(7)後半感想 

土曜日の17時過ぎですが、熊本市の北のほうですが、遠くで雷鳴しています。
気象庁のレーダー見ると17時前に阿蘇のほうにあった積乱雲が西方向に移動しています。


2018年8月4日16時45分の雨雲レーダー


上の画像から10分後 8月4日16時55分

 
上の画像から20分後 8月4日17時15分
リアルタイムで、このくらいの時間で竜巻注意が出ました。


上の画像から20分後の『予測』 8月4日17時35分予測

 上の画像から30分後の『予測』 8月4日18時05分予測


上の画像から10分後の『予測』 8月4日18時15分予測

今日はお昼前に近所の公園で散歩。暑い暑い、と言いながら。(苦笑



さて本題

7巻後半 暗殺者

感想というかあらすじそのままなのでネタバレです。ご注意ください。


5巻の長編に続く2編目の長編です。
浪川周蔵の心はまっすぐですが、その生い立ちの暗さに、つけこんだ旗本の殿様のねじ曲がったたくらみが事件を起こします。
五十五、六、小柄な元締と呼ばれている老人が浪人浪川周蔵に五十両で殺しの依頼をしています。場所は目黒不動門前のの料理屋山の井
小兵衛は内山文太の死を引きずっていました。医者の横山正元のもとを訪れたりしています。正元せんせいは文太の孫のお直と夫婦になって、お直は見違えるほど元気になっていた。小兵衛は胸の内で文太に語りながら、気晴らしができている様子。
その帰途、高田の七面堂を通りかかったところ、素手の浪人を襲う抜刀した二人の浪人の3人を見かける。
素手の浪人は左の小鼻に黒子が見え、小兵衛は見覚えがあった。
黒子の浪人は抜刀して見事な技で二人を追い払う。小兵衛は大治郎の家近く真崎稲荷で童女を連れた黒子の浪人浪人を見かけたことを思い出す。
黒子の浪人の腕前の凄さを見た小兵衛は襲ってきた二人の浪人を追わない黒子の浪人の行動の不思議にと腕前に興味を惹かれる。晩年が変わって、この黒子の浪人が浪川周蔵であることが明らかになる。
妻に引っ越しの相談をしている。。また、と言っているので何度も住処を変えているようだ。妻は静、娘は八重という。かつて浪人をしていた静の父とは、家が隣で周蔵と交誼があった。静の父は、浪川に浪人の汚れがついていないと評価していた。浪川から聞いた話では浪川の先祖は土佐の出身らしい。その父は病没し、浪川が葬式を仕切り、ひと段落して、浪川が静に求婚し、二人は夫婦になった。
小兵衛は、不二楼の主が半年ほど無沙汰にしていることを心配して招いてくれたので、応じる。
途中、寄った船宿の鯉屋の女主お峰に黒子の浪人を聞くと、浪川の名前と住処はすでに引っ越したことを聞ける。
小兵衛は、不二楼で、浪川を襲った二人の浪人のうち一人を見かける。
その浪人は平山といい、連れの立派な身なりの侍は小田切という。二人は蘭の間に入って、話をしているところを隠し部屋から聞く小兵衛。小田切が平山と松崎という浪人に浪川を腕試しのため襲わせたことがわかる。浪川の腕で、小田切らの強敵を撃とうとする構図を見て取った小兵衛は、その強敵は誰か?浪川との決闘にっ剣客としての興味がひかれた。
小兵衛は牛堀から、旧友の稲垣忠兵衛が重病に臥せっていることを聞き、見舞いのため、麻布の仙台坂に向かう。稲垣は父が仙台城下に道場を開いていた縁で、伊達家の家来に多く門人がいて、その縁故で、伊達家の下屋敷に居があり伊達家の庇護を受けていた。小兵衛は浪川gが伊達家の通用門から出てきたところを見かける。
さらに浪川のあとを追う存在にも気が付く。
稲垣の見舞いで、浪川のことを聞くと、以前心臓の発作でうずくまっているところを助けられて以来の縁だという。
内山文太のことを反すつもりだった小兵衛は、稲垣の具合を見てためらう。
この話の冒頭、出てきた浪川に五十両で殺しを依頼している老人の正体が明らかになります。
老人は碑文谷の萱野亀右衛門という、目黒渋谷麻布に縄張りを持つ香具師の元締。このころ、碑文谷の亀右衛門の別宅に、浪川の家族は住んでいた。
不二楼の主人与兵衛が小兵衛の隠宅に現れる。先日の小田切が立派な風采の侍と店に来て蘭の間で密談していい手、与兵衛が隠し部屋で盗み聞きしたところ、府立派な侍の口から秋山大治郎の名前が出たことを告げる。
さすがにほおっておけない小兵衛。
年が明け、小田切は平山浪人と話をしている場面。浪川に秋山大治郎を殺害させる計画。
小兵衛は不二楼の主与兵衛から話を聞いたあと、弥七親分と傘徳さんに打ち明け、相談します。
小兵衛が見る限り、浪川と大治郎が斬りあって、大治郎が必ず勝てるとは言えないと弥七にいう。
弥七はすぐに傘徳を不二楼に張らせることを小兵衛に提案。小兵衛は眼を潤ませながら弥七に頼む。
弥七はその目に小兵衛の老いを感じ胸が熱くなる。
弥七は不二楼から小田切の線を探る計画、伊達屋敷の稲垣から浪川の住処を探る計画の二つが探索の糸口になると見る。
小兵衛は大治郎を呼んで、説明するが、大治郎は心当たりがない。
傘徳さんが張っていた不二楼には平山浪人と小田切が現れるが蘭の間が空いていなかったため早々に引き上げるが平山を追った傘徳さんは瑞雲寺に入っていく平山を見る。
この話を聞いた小兵衛は気がそぞろで一人で瑞雲寺に向かう。
瑞雲寺で、平山と松崎にわざと捕まる小兵衛。
何とか逃げ出した小兵衛だったが、得るものはなかった。
浪川のもとに、手紙が届く。浪川が九品寺の浄真寺に赴く。
そこで待っていたのは小田切と、松平伊勢守という旗本の殿様。伊勢守はじきじきに浪川に秋山大治郎を斬ることを命じる。
伊勢守は「天下の事じゃ」という。さらに「周蔵、おのれの母が事を忘れるなよ」三日後に返答せよと言われ浪川は立ち去る。
周蔵は亀右衛門の殺しの依頼を引き受け、見事の技で殺しを遂げる。周蔵はその代りに妻子を安全な場所に隠して欲しいと亀右衛門に頼む。弥七は周蔵の後追って碑文谷の隠れ家を探る。これに周蔵が感づいたのか、周蔵の家族の移動は早まる。
小兵衛は稲垣を見舞い、そこで浪川とすれ違う。浪川の目には闇討ちするものの曇りがなく小兵衛は戸惑う。
そのころ小田切が一人で不二楼に現れ、帰りを弥七と傘徳が追う。
小田切は木場のはずれの忍び返しが付いた高い塀のある屋敷に入っていく。
弥七が知り合いの深川の御用聞き新蔵に聞いて調べて見ると、新蔵は弥七にこの件はかかわらないほうがいいと警告する。
屋敷の持ち主は松平伊勢守という旗本で三年前まで目付をやっていた。
弥七から事情を聞いた小兵衛は門人の中から奥御祐筆をやっていた滝口彦右衛門を訪ねて松平伊勢守のことを聞く。滝口曰く、伊勢守を思い切って目付を罷免したのは田沼意次だという。
小兵衛は大治郎にこのことを話し。大治郎は小兵衛に今年も意次から二月二十日の墓参のお供を命じられたことを言う。そこで小兵衛も気が付く。
田沼意次は毎年亡妻の命日に私的に非常に軽い形で警備もつけず墓参していた。小兵衛は昨年から大治郎がお供に加わっていること、伊勢守の本当の狙いは田沼意次の暗殺。そこにはお供が二人しかおらず、その一人が大治郎で、大治郎を斬ることができる手練れの人物として浪川が必要になっていることに気づいた小兵衛は興奮しヒステリックに大治郎に迫る。むしろ大治郎のほうが落ち着いて小兵衛をなだめています。
やはり、小兵衛も66ですし老いたのでしょうか。老いたとはいえ頭の回転の速さには目を見張るものがありますが。
波川の生い立ちが明らかになります。波川の父親は伊勢守の用人でした。
周蔵が17の時に急死します。その23年後浪川の母に伊勢守の手が付き、周蔵が20の時、すれ違いざま鞘が当たって相手が不当な言いがかりをつけた時、周蔵は斬って殺してしまう。周蔵は伊勢守に相談して出奔。
17年の時を経て伊勢守は周蔵を呼んで今回のことに至る。しかし、周蔵も伊勢守も17年前とは変わりきっている。
さらに、周蔵の母親は発狂している。
いよいよ決行の日が近づく、周蔵は殺害の目的が秋山大治郎だけではないことを知り、大治郎は護衛で、真の目的は田沼意次ではないかと感じる。伊勢守が目付を罷免させられた恨みに老中田沼意次を殺害するつもりではないか、
田沼老中の街籠が屋敷を出る。襲撃の資格は全部で8名。小田切までも、此度のことは天下の事、というではないか。これに、周蔵は、目的が田沼老中の殺害であることを直感した。いいよいよ襲撃の場面。
小田切たちが籠の前に立ちはだかり、周蔵が籠の後ろの大治郎の後ろに回ると見えた刹那、周蔵が刀を抜きざま身をひるがえし、小田切の左ひじを切断。小田切の体を体当たりで跳ね飛ばして、平山の首筋に切りつける。
籠の中に資格が手槍を突き入れた時には中の人はおらず、先の籠の前に資格が飛び出して籠が倒れた時に小柄な人影が籠から転げ出ていた。これは田沼意次ではなく、秋山小兵衛。
小兵衛の抜き打ちに資格の一人が倒れる。大治郎は松崎浪人を斬って、周蔵ももう一人の資格を斬って小兵衛はもう一人の刺客を斬って、もう一人は秋山と供をしていた白井与平次が斬った。残りは逃げた。
この血闘はあっという間に終わった。
小田切や刺客思いもかけぬ逆転だった。小兵衛は周蔵に、「この仕儀は?」と問う。
周蔵は、「秋山先生のご子息に歯向かうことはできませぬ。そのようなことをいたしましたら。稲垣忠兵衛老人を裏切ることになります。」と語る。
生母が、いまも伊勢守の世話を受けているからといって、秋山大治郎を斬るような周蔵ではない。
いまの松平伊勢守はかつて、周蔵が慕っていたころの伊勢守ではない。
かつての伊勢守であれば、じぶんが手を付けた女周蔵の母のことを持ちだして
「周蔵、おのれの、母がことをわすれるなよ」と義理で縛り付け、周蔵には理由もわからぬ秋山大治郎殺害を命じることなど決してなかっただっろう。
生母のことは見捨てても大治郎を襲うような波川周蔵ではなかった。
老友稲垣忠兵衛の言葉にうよって、周蔵は秋山父子の人ががらをよく呑み込んでいた。
母上もこのようなおれをゆるして下さるだろう、と周蔵は思っている。
五日後、伊勢守は深川の別邸で切腹した。
意次は伊勢守の切腹と小田切の自白で、納得はした。伊勢守への探索はあえてしなかった。
小田切には傷が治り次第好きなところに行け、と伝えている。
意次が小兵衛に語るところによると、
かつて、意次も伊勢守に期待していたが、伊勢守が権力をてにしてその権力に溺れ人がらが変わって、やむを得ず、目付を罷免したと語った。
今回の事件は伊勢守の恨みから出たものだろうが、「田沼を討てば天下のためになると思ったのではないか」
と語る。
言葉通り、この事件から一か月の後、若年寄だった意次の長男山城守意知が江戸城内で殺害される。
この事件のあと田沼の権勢は急速に衰え、2年後に老中を免ぜられ領地2万石も没収される。
田沼意次は予感めいたものがあったのか、小兵衛に、今後の三冬と孫の小太郎のことを沈痛な声音で頼んでいる。
事件から1年後、波川周蔵はかつて父の配下だった弓師の加藤弥兵衛のもとを訪れる。
周蔵は母親の事を加藤に聞く。加藤は驚くこと言う、周蔵の母親は加藤が保護しているという。
周蔵の母は静かに気がふれており、狂いの度を深めているようだった。周蔵は泪を溢れさせ、今は藤沢にはずれにいる家族で母親を引き取ることを加藤に告げ母とともに藤沢に去っていく。
最終的には前回の長編同様、田沼意次に絡む事件ではありましたが、政治的な匂いはありません。
ただ、田沼政治の末期をうかがわせるものはありありと見えます。
老いた意次も、娘三冬と孫小太郎が気になって仕方ない。
小兵衛もこの回ではずいぶん老いを感じさせる場面が増えています。
特に前回、 「夕紅大川橋」で描かれた、自身にとって半身と思っていた長年の友人、内山文太の死は響いていると思います。
こうした、古く長く付き合ってきた、絆というものが切れるのは、心に大きな傷を残します。
人の命には限りがあるのでいたしかたないことではあります。いかに人生の達人の小兵衛にしても、こればかり
いたし方のないことなのでしょう。
池波さんが考える、人の絆のあり方を表したものでしょう。
自分もそういう覚悟をしなくてはいけない年になり、自身がそういった境遇にあるので、非常に考えさせられました。


0 件のコメント :

コメントを投稿